死んだことに気が付いていないんだ。


古家先輩が悲鳴を上げ、俺の腕をキツク掴んだ。


「城……」


俺は唖然として城を見ていた。


城もまた俺を見ている。


しかし、その目はもう光を宿してはいなかった。


「嘘だろ……城……」


声が震え、立っている事ができなくなった。


その場に膝をつくと、城の体が目の前にあった。


「逃げ……逃げなきゃ!」


古家先輩が俺の体を揺さぶる。


そうだ、逃げなきゃ。


逃げなきゃ殺される!


頭では理解していた。


でも、体は全くいう事を聞かないのだ。


「椿のように散って死ね」


その声が聞こえてきて、呼吸が止まった。