「何の音?」


先輩が周囲を見回す。


しかし周りには誰もいない。


チェンソーの回転する音は徐々に近づいてくる。


風花たちの時と同じだ。


音は聞こえているのに、相手がどこにいるのかわからない。


「くそっ……! 逃げろ!」


俺は城の腕を掴み走り出した。


しかし城は足が絡まってうまく走れない。


「なにしてるんだ、死ぬぞ!」


「わかってる!」


なんとか体勢を立て直し、再び走り出す城。


古家先輩もどうにかついてきている。


このまま森を抜けて《椿ホーム》まで戻ればきっと誰かが助けてくれる。


そう思った時だった。


「椿のように散って死ね」


その声が、すぐに近くで聞こえたんだ……。