その時だった。
突然風花と綾菜ちゃんが耳を塞ぎ、苦しむような表情を浮かべたのだ。


「おい、どうした?」


慌てて風花に駆け寄る。


「声が……聞こえてくる……。耳を閉じていても頭の中に響いてくる」


風花は恐怖で実を震わせ、そう訴えて来た。


「お姉ちゃん!」


綾菜ちゃんが風花に抱きつき、風花もその体を抱きしめた。


俺と城は注意深く周囲を見回す。


今までついていた外灯の明かりが気が付けばすべて消えていて、辺りは真っ暗だ。


民家の明かりで少しだけ照らし出されている道を確認するが、そこには誰の姿もなかった。


しかし……チャンソーの音は徐々に近づいて来ているように感じる。


最初は空耳とも思える距離だったのに、今はしっかりとその音が耳に届いているのだ。


焦りで背中に汗が流れた。


城も同じなのだろう、しきりに手のひらの汗をズボンで拭っている。


「どこにいる……」


俺は思わずそう声に出していた。


それに反応して風花が顔を上げる。


「ねぇ良真、それってどういう意味? 誰かがいるの?」