俺はそう思いばあちゃんの顔を覗き込んだ。


深いシワに埋もれてしまいそうな細い目が俺を捕らえた。


「良真……」


ばあちゃんの体からフッと力が抜けるのがわかった。


「ばあちゃん、大丈夫か?」


「あぁ……良真、良真……」


ばあちゃんは介護士の手を解き俺に近づいてくる。


「どうしたんだよ、何か嫌な事でもあった?」


そう聞くと、ばあちゃんはブルブルと小刻みに体を震わせた。


まるで恐ろしい物でも見たような反応だ。


「椿姫が怒ってるんだよ……」


「椿姫? なにそれ、ばあちゃんがいつも言ってたのは椿森の話だろ?」


「椿森じゃない! 椿姫だ!!」


ばあちゃんはカッと目を見開き、そう怒鳴った。


今までばあちゃんに怒鳴られた事なんてない俺は、一瞬ひるんでしまう。


「なに? それってどういう事なんだよ?」


「椿姫の長年の怒りが晴らされる時が来た。椿姫には誰も逆らえない……」