「なぁ、お前は椿森って覚えてるか?」


そう聞くと、城は首を傾げた。


「今、椿ホームが建っている所だ」


俺がそこまで言うと、城は思い出したように「あぁ、そうだったな」と、大きく頷いた。


「今回の自殺と関係があるかどうかはわからないけど、行ってみないか?」


「椿森にか? でもあそこはもう老人ホームになってるんだろ?」


「そのホームには俺のばあちゃんが入居してる。見舞いに来たと言えば入れさせてもらえるんだ」


「なるほど。確かに、この街で《椿》といえば思いつくのはそこくらいだもんな」


城はそう言い、俺より先に歩き出した。


「良真、城、どこか行くの?」


教室を出る手前で風花に声をかけられて俺たちは一旦立ち止まった。


「男同士の野暮用だよ」


城がかっこつけてそう返事をして、風花は「なにそれ」と、肩をすくめたのだった。