きらきら。きらら。眩しき風に吹かれて海を眺める二人一組。実は、私にも分からない私たちは出会った瞬間から恋をはじめた。稲妻みたいに、涙もないようなうちから、片思いのように熱がる恋路。いま、舜は彼氏だ。…彼氏の舜が寝坊しているように私にもたれかけて居眠りをしている。防波堤うえ。…舜は、起きない。私が起こさないのだけれど、どうしても舜は私から離れたくないとでも言うように、ぴたりおでこを肩と二の腕にくっつけている。
「舜、眠たい?」
私はマウントの印字のアイスラテを一口飲んだ。舜の分のエスプレッソはまだ開いていない。舜は、欠伸をして、横目で海を見つめた。
「新学期だよ、まなみ。」
「うん?うん。おはよう、起きた?」舜は、エスプレッソを開ける前にわたしのラテを欲しがり口にした。苦い珈琲は、低糖。でも舜は無糖派で、全然欲しがらなかった。
こくり、こくり、と寝ていた舜に、朗報を告げようと、私は田舎の海辺を見つめた。
「同じクラスになったよ、舜。」
舜は、びくりと動いて、私を見つめ返した。私は、にやにやとにやけて舜を見下ろした。
「ほんとうに?」
「もちろん!同じクラス!先生に感謝しよう?舜、だいすきよ。」
舜は、私の頬に口づけすると、抱き締めてきてくれた。
暖かいからだと、息の荒い呼吸と、分厚いブレザー。ふたりぶんの制服。

ふたごみたいな小島が、海で荒れる波を待ち受けている。ざざん、ざざんと音が大きい。
糸島市の二見ヶ浦。福岡の西のほうにある。 
私たちの街は、福岡にあって、海辺に面した道を挟んで5分もしたら、海から校舎にたどり着く。

舜は、ここでお母さんが紹介してくれた。
同じように小さな頃からヤマハ教室に通っていたらしい、舜は、隣の市からやってきた。
すらりとしていて、長身で、髪は茶系に自然と染まり、瞳は、それなのに黒々と大きい。
声変わりが、自然に終わりかかった男子のなかで、ちょうどそのころ、中学生の頃、引っ越してきた。
舜は、私たち女子のなかでも人気のある生徒では、なかった。理由は、方言で、強い山里方言のある舜は、女子が話しづらいと、避けていた。

そして、押し出されたように、先生の真後ろの席に選ばれた。わたしも、籤で外れて。

瞬は、そのとき、覚えてる?

すっごく勉強頑張ってたんだよ、私の隣で。負けないように、力づくでじゃないけど、馬鹿にされないように、かりかり、机から休み時間も離れなかった。

それに、気がついて、私は休み時間と帰りの時間、屋上の階段でキャンディ片手に休憩がてら息つくように休んでいた。
高い場所から吹く、風と、潮風と、さざ波の音がきれいで眠ることもしばしばあった。