「ど、しよ……もう逃げ出してしまいたい」


『どうしたんだよ……。仕事どうすんだ?』



もうあたしの心はズタズタだった。

ずっと、いつか振り向いてくれたらそれでいい。
もし振り向いてくれなくても、学くんはあたしと結婚してるから。
それだけで繋ぎとめておけるからって思ってた。



「……社長に電話する」



こんな状態で、誰かの面倒なんて見てる場合じゃない。
こわなひどい状態で白衣着て、にこやかになんて過ごせない。



『俺、今日は仕事ないからさ。車で迎えに行ってやるよ。ちゃんと話せ』


「……うん、ありがとう」



燿くんとの電話を終えたあたしは、社長の番号をスマホに表示させる。

社長のこと、義理のお父さんだと思ってたけど。
違ったんだ。

いや、社長は結婚したと思ってるのか。



『もしもし?ちとせちゃん?』



スマホから聞こえてくる優しい声色。



「社長……ごめんなさい、今日会社に行けてません……」