「仲いいな。幸せにな」


「お、おう」



大塚さんに言われると、学くんは少し困ったように返す。

学くんは、お父さんに言われて仕方なくだもんね。
それでもいいと決めたんだ。
あたしが好きなのは学くんだから。

あたしが学くんの妻たなった事実は変わらないから。
この先も一緒にいて、いつか好きになってもらえたらそれで。

だってあの時は、学くんだって……。



「ちとせ」



ふいに呼ばれた名前。
ずっと〝ちゃん〟づけだったのに、急にされた呼び捨てにドキドキするあたしの心臓。



「大塚がこれ貸してくれた」



にっこりと笑いながらあたしにひとつのボードを差し出す。



「これ……?」



あたしは大塚さんの方を見る。



「記念にどうぞ」



ボードには、今日の日付と〝結婚しました〟という文字。
ささやかだけど、心遣いが嬉しくて。



「ありがとうございます」



何度も何度も大塚さんに頭を下げた。