「綺麗……」



思わず口に出してしまった私に、



「ありがとうございます」



最近よく聞く声が聞こえ、飛び上がりそうになった。

好きでもなんでもないのに、鼓動がやたら速い。




深呼吸してゆっくり振り向くと……

そこには見慣れた彼が立っていた。





茶色味のある、軽くウェーブのかかった髪。

大きい瞳に、上品で整った口元。

一昨日は変なアロハシャツ、昨日はごく普通のコートを着ていたが、今日は少し細身のお洒落な濃紺のスーツを着ていた。

そんな彼は、いつも以上に極上の男性に見える。

だが、見た目と肩書きに騙されてはいけないと言い聞かせた。