こんな緊迫した空気の中、黙っていた母親がとうとう口を開く。 彼女は、相変わらず悲しげな顔のまま、消えそうな声で話す。 「そうは言うても、あんたは桜庭家を捨てていまへん。 あんたの作品には、桜庭流の真髄が流れてん」 司君はぎゅっと口を閉じる。 そんな司君に、彼女は悲しげに笑いかけた。 「うちらが気付かへんとでも思うたか?」