「司君……」
必死で車の消えた道を走る。
どこかに停まっていないかな、なんて思ったりして。
それでも、黒い高級車は見つかるはずもなく……
いつの間にか降り出した雨に濡れていた。
コートとかいらない。
高級料理も、美しい花だっていらない。
私が欲しいのは……散らかったあの部屋で、私を見て優しく笑う司君だけだ。
こんなに好きだったのに。
司君しか見えなかったのに。
やっと幸せになれると思ったのに。
……全て奪われた。
土砂降りの中、ずぶ濡れの私を……誰かがそっと傘に入れた。
そして、静かに言う。
「お兄ちゃんを助けて」
「……え?」
「あなたしかいーひんの。
お兄ちゃんを取り返して……」



