「司の実家、有名な華道の家元なんだよ。
あいつ昔から華道の英才教育されて、後継者として育てられたんだけど、司はそれが嫌みたいで。
それで必死に勉強して、東京の大学受験したんだって」
そうなんだ……
じゃああのフラワーアレンジメントの才能は、生まれ持った能力ではなくて、司君の努力の結晶ってこと?
目の当たりにした美しい装花を思い出して、再び胸がどくんとした。
「司は京都に帰るつもりはないんだけど、当然両親は帰って欲しい。
だから、内定した就職先全部に断りの電話を入れたんだって」
「俺、変人だから、就活全部落ちちゃった」
司君は笑っていたが、心の中では泣いていたのかもしれない。
自分の望んだ仕事をしている友人たちを、司君がどんな思いで見ていたのか。
きっと、私なんかに分かるはずがないだろう。



