だけど……




「美沙子は知ってた?」




男性が、ただ一人一緒についてきた女性に聞く。

鮮やかな赤いドレスを着た、美しい女性だった。

彼女は腕を組んで司君を見つめたまま、得意げに言う。




「知ってるよ。

司のことは、なーんでも」




その言葉が胸を抉る。





考えたくないけど……

そうであって欲しくないけど……

この人ってまさか、司君の元カノ?

私よりもずっと頭が良くて、ずっと綺麗な女性だ。


敗北感。嫉妬。その言葉がぴったりの、どす暗い感情が渦巻いた。