「リュックの外側のポケットとか……」
彼は黒いリュックを下ろし、おもむろにポケットを開ける。
そこからはティッシュのゴミが飛び出してくるだけで、パスポートなんてなかった。
「内側のポケットとか……」
リュックの内側を漁るが、お菓子やタオル、挙げ句の果てには千円札が飛び出してくるだけだった。
呆れ果てた私は言う。
「服のポケットは?」
それで彼がパーカーのポケットに手を突っ込むと……
一瞬、顔が固まった。
そして、みるみるうちに満面の笑みになる。
彼は目を細め、白い歯を覗かせて私に言った。
「あった……あったよぉ……!!」
その言葉が嬉しくて、思わず彼の両手を掴み、二人で飛び跳ねていた。
そんな私たちを通行人は奇妙な目で見る。
だからはっと我に返って、慌てて手を引いた。



