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年が明けてから、1ヶ月弱。寒さがだんだんと厳しくなってきたある日の夜。
夜の7時過ぎに、スマホが鳴った。
今日はずっと、これを待っていた。朝からずっとそわそわと落ち着かなかったのは、このせいだ。
「…はい」
ドキドキと高鳴っていた心臓を抑えながら、わざと平然を装った。
『…近海?』
「うん」
家で、自分の部屋でひとり、生唾を飲み込んだ。今日は茶々のために、バイトは入れなかった。きっと、この電話があると信じていたから。
『今日で、センター試験、終わった』
1月。朝のニュースでも大々的に取り上げられていた、センター試験が行われた。大学受験をする人たちは、全員と言っていいほど、この試験を受ける。
この結果が、二時試験という大学の受験にも重要になってくるから、受験生はまずこのセンター試験で良い点を取れるように頑張るのだ。
茶々はそれを今日、ようやく終えた。2日間、みっちりと詰まった時間を、乗り切った。
「…おつかれ。頑張ったな」
『うん、ありがとう』
「まずは乗り切ったことを褒めるよ。落ち着いて臨めたか?」
『うん。とりあえず、やれるだけはやってこれたかなって感じ』
「おお。すげーじゃん」
センター試験で、うまくいかない時だってある。問題が難化する年だってある。選択教科が鬼のように訳の分からない時だってある。
そんな中で、『やれるだけやれた』と言えるのは、きっとうまくいった証拠だ。
でも、やれると思っていた。茶々なら、絶対やりきると思っていた。そう、信じられる女だから。



