「かわいい。ありがとう近海。筆箱につける!本番も、持っていく!」
「…うん、そーして」
御守りだけじゃなくて、魔除けの力もあったらいいのにって、思ってしまった。
茶々に近づく変な輩を、除けてくれる力。
…そんな心が狭い力、宿るわけないか。馬鹿らしいにもほどがある。
茶々の、冷え切った頰に手を伸ばした。
真っ赤になっているその顔は、この真冬の空気にキンキンに冷やされて、雪のように冷たい。
ホッカイロを持っていた右手で触ると、その冷たさはより際立った。
「…あんま、触らせんなよ」
ぎゅっ、と、力なくつねる。その様子を、茶々は不思議そうに見ていた。
「…なんて言ったの?」
「別に。なんも言ってねーよ」
「は?何それ。絶対言ってたじゃん」
「言ってねぇ」
本当は、この日だけじゃなくて、ずっとそばにいたいって思ってるよ。
お前が、もう二度と珠理の面影を追いかけていかなくていいくらい、俺で頭がいっぱいになればいいと思ってる。
でも、そんな情けないこと、やっぱり言いたくないから、今ばっかりは、仕方ない。
「…みんなに、会っていかねーの? ちょっと離れたとこにいるけど」
「うん、もう行かなきゃだから。また集まる時に教えてよ。塾の帰りとかに寄るから」
「おー。伝えとく」
冷たい前髪に手を置いた。くしゃくしゃと撫でてやったけど、茶々は俺があげた鳩の御守りをじっと満足そうに見ているだけで、それには気づいていないようだった。
…どんだけ可愛いものが好きなのか。
本当、肝心なこと、見てくれないよな、お前は。
でもやっぱり、そういうところも、可愛いと思ってしまう。
俺って、かなり重症だと思う。



