俺の後ろに隠れて、右京くんと距離を取ろうとする茶々。服が引っ張られている。
…ていうか、いつの間にそんなに仲良しな奴ができたんだよ。お前、こんな風に男とじゃれ合うようなキャラじゃなかったじゃん。
もやもや もやもや。
また、得体の知れない黒い何かが、積もっていく。
「んー、じゃあ、俺先に日向とこ戻ってるから。早く来いよ」
「わっ」
茶々の頭を、ガシガシと撫でる青髪男は、茶々の反応を少し楽しんだ後、俺の方を向いた。
少し、俺自身の目つきが悪くなったのが、自分でも分かった。
「…絶対、受かりますよ。K大」
意味が含まれたような、その言葉。俺を見る目。
俺はもう、受験生でもなんでもないし、張り合われるような存在でもないはずなのに。
なんだこの、ヒシヒシと伝わってくる競争心は。
「…せいぜい、頑張れば」
積もっていく何かをグッと抑えながら、笑ってみせた。余裕ないところなんて、見せたくなかった。実際、余裕ないわけじゃなかったし。
相手は、一歳だけとはいえ、年下だし。
「…お前は行かなくていーの、茶々」
腕を引っ張っていた茶々の頭に、手を乗せる。大きい黒目が、再び俺の方を向いた。
「行く。けど、なんか近海がいつもと違うから」
「は?」
いつもと違う? 俺が?



