茶々の視線を追う。
背中に当たった声の主は、俺を通り越して、となりにいる茶々を見ていた。
「…右京くん。どうしたの?」
少し、青っぽい色の髪。染めてるのか。変わった色だ。
高い身長。珠理とあまり変わらないんじゃないかと思う。
黒いピーコート。茶色っぽいマフラー。少し、珠理の服装と似ている。
「ごめん。なかなか帰って来ないから、日向が心配してて。だから俺、迎えに…」
ひゅうが、とは、茶々の友達の初ちゃんの苗字。やっぱり、3人で来ていたのは本当らしかった。
「…って、知り合い? 話し中だった? ごめんね」
…この男が、ウキョウくん。この間、電話の先で茶々と仲よさそうに話していた男。
背、やっぱり高いな。サラサラの髪。こりゃ、相当モテるな。なんて、男の俺でも分かってしまう。
「ううん、大丈夫。ごめんね遅くなって。えっと…、近海、この人、右京くんって言うの。同じ塾の」
「…おう」
紹介された。別にいいのに。
「陸奥近海です。茶々がいつもお世話になってるようで、すみません」
なんで、俺が挨拶してるんだか。つーか、こういう時になんて言えばいいのかワカンネェ。しかも年下だし。
「…こちらこそ。えっと…、ちゃっちゃんの…?」
「中学と高校が一緒だったの。今はK大学の1年。ねっ近海」
…ねっ近海って言われても。ひとつも間違ってはないんだけどさ。
「ええっ!?K大!?俺らの志望校じゃん!すげぇ!」
「でしょ〜?近海ったら、めちゃくちゃ頭良いんだから!右京くんよりも」
「ハァ〜?何言ってんの。そんなこと言ってるとまた攻撃すんぞ? 手、冷えてっからな」
「はっ!?ちょ、そんなのしたら絶交だから!」
…なんなんだろう、この茶番は。



