「お前が勉強教えて欲しいって言われれば、鎌倉になんかいくらでも帰ってくるよ。頼られてんだから当たり前じゃん。東京から鎌倉なんて、どうってことない」

「…オーミ、」

「2人で会ったら、お前が行きたいところに行きたいし、食べたいもの食べさせたい。少しくらい、奢ってもいーじゃん。カッコつけさせろよ」

「…!」


「俺だって、お前が早くこっちに来ればいいって思ってる。俺の近くにいればいいって。お前と思ってることと、なんも違ってない」



——さすがに、恥ずかしくなってきた。


やっぱり、至近距離にいて正解だった。顔全体を見られながらこんなことを言うなんて、死にたくなる。


なんだこれ。もうさすがに気付くんじゃねーの。別に隠してきたつもりもないけど、高校時代からこんなこと、一言も言ってやらなかったから死ぬほど恥ずかしい。

世の中の男たちは、こんな恥ずかしいことを好きな女に言うのか。珠理も、こんなこと言ってんのか。

…心から、尊敬する。



「…オーミ…、ぶっ…」


引き寄せていた茶々が、もぞりと動いた。だから、さらに強い力で引き寄せてやった。


「ちょっ、痛い!」

「うるせーな。大人しくちょっとそのままで待ってろよ」

「は!?無理!首が痛い!」

「無理しろ!ぜってー上げんなよ」


しかも、ここカフェじゃん。他のお客さんだっているのを、俺は忘れてた。もう、最悪だ。カウンター席にしていてよかった。


「ねぇ、近海」

「…なんだよ」

「さっきからね、お腹鳴ってる。うるさいよ」

「おめーがうるせぇよ。そんなこと言うな。恥ずかしさ増すだろうが」


まったく。どこもかしこも怒るポイントばっかだな。コイツも。

でも、こーいうくすぐったいのも、なんかいいな。落ち着かないけど。穴があったら入りたいくらい、恥ずかしいけど。