———“ 親友のことが好きな彼女が好きだ ”


そのことに気づいたのは、この世で最も大切な親友が、俺に彼女を会わせてくれた中学2年の秋のこと。


くやしいくらい、一目惚れだった。


サラサラと流れている黒髪。大きくて輝いている目。白い肌。
親友の隣で、真っ赤に染めていた頰。


その全てが、あの頃の俺を一瞬で虜にした。

そして、未だに消えない想いを植え付けていった。



「…あたし、近海になりたい」



時折、我慢できないというように静かに流れる涙が、俺をさらに縛り付けた。


「なんで、俺になりたいの?」

「だって、そうしたら珠理とずっと一緒にいられるじゃん。珠理の近くにいられるじゃん。珠理のこと、一番に分かってあげられるじゃん」

「…」


…この世に、こんなに儚いものがあるって、初めて知った。



「…俺だって、アイツになりてーよ」



どうしたって叶わない。届かない。
そんな気持ちを持ったのは初めてだ。


どんなに想っていたって、彼女の想いがこちらに向くことなんてない。

どんなに頑張ったって、優しくしたって、届くわけがない。


報いなんかない。ご褒美だって一度もない。


そんな情けない想いが、俺の想い。





俺の、一生ものの恋。