「…オーミ、くるしい…っ」

「うん、」

「何回するの…っ」

「うん…ごめん」


離れがたい。今までは一緒に時間を過ごせるだけでしあわせを感じていたのに。会えるだけで、うれしいって思っていたのに。

…人間っていうのは、本当に、欲張りで。

やっと想いが繋がったのかと思えば、もっともっとって、歯止めが効かない。

頭が、おかしくなったんじゃないかと思う。



「…ごめん、早く行かなきゃな。遅くなる」

「うん」


それでも、暴れまくる感情を抑えながら、茶々の乱れたマフラーを直してやった。白いふわふわに包まれた目の前の生き物が、可愛くて仕方がない。


「…んじゃ、気をつけて帰れよ」


ぽん、と、左手を乗せる。2、3回ほどくしゃくしゃと撫でて、崩れた前髪も直してやった。

それをじっと見つめる茶々。

…なにか、言いたげだ。


「…? なに」

「…」


しばらく、じっと黙って俺の方を見ていたけれど、茶々は何かを決したように、俺の方をキッと見つめ直して。


「…オーミ、」


ピタ、と、その冷たい小さい指先を、俺の頰にくっ付ける。

………え。 なに、これ…。どういうこと。


「…え、なに。どしたの?」

「……別に。茶々も、さわりたくなっただけ」

「…っ!!」



——色々、反則だと思う。

存在するっていうだけで、気持ちが通じあったというだけで、俺はもう、天に昇るくらいの気持ちだっていうのに。

この女は、どこまで俺の心臓を壊しにかかってくるのだろうかと、逆にこわくなってくる。


…めごちゃんと気持ちが通じあった時の珠理も、こんな気持ちだったのだろうか。


だとしたら、奇跡が起こった世界って、眩しすぎてかなわない。あいつが、感情を高ぶらせて話をしていたのだって、納得がいくよ。


今は、俺が一晩中、話したい気分だ。