「もう!風邪ひいてるんだから早く寝て!こんなことしてる場合じゃないんじゃないの!」
「…へぇ、こんなことって?」
「うるさい!!」
真っ赤な顔で、ドンと背中を押される。そのままベッドに転がされた俺。容赦なく布団を着せられ、先程出してそのままにしていた冷えピタを額に貼られた。
照れ隠しなのか、それとも本当に俺の身体を心配してそうしてくれたのか。…どっちでもまぁ、うれしいけど。
「…もう、帰んの」
もう少し、一緒にいたいって思うのは、俺だけなのか。
茶々の気持ちが向けられて、それだけでお腹いっぱいのはずなのに。…人間というものは、やっぱり欲張りなんだと思い知る。
冷えピタを貼ってくれたその手を掴んで、茶々の方を見ると、少し怒っていたその顔が見えた。
「…夜までに帰ればいいから、あと少しいてあげるわよ」
「そっか」
ほっとする。もう少し、今日のことが夢じゃないんだって確認する時間がとれるらしい。
「…近海、ごはん食べた?」
「んーん。珠理が持ってきたフルーツだけ」
「……お粥、作ろうか。食べられる?」
「…! 食べる」
正直、食欲なんてなかったけど。茶々が少しムスッとした顔でそんなことを言うもんだから、頭で考える前に返事をしてしまった。
でも、いい。 茶々が作ってくれるんだったら、なんだっていい。
「…じゃあ、大人しく寝てて。台所借りるね」
…俺って、本当に、茶々にゾッコンなんだと思う。
そーいう自分を、イタイなって思ってしまうのに、好きだから仕方ないと開き直ってしまうくらいには、舞い上がっていた。



