それでも、ずっと想ってきた相手にほんとうの気持ちを伝えるということは、心から照れるもので。
言ってしまったことを急に自覚して、足元から熱が上がってくる。
…風邪のせいなのか、告白のせいなのか、今となってはもう分からない。
それでも、茶々は赤くなっていく俺をよそに、また口を動かしていた。
「…あたし、1年間、近海のいる大学に受かるために頑張ってきたけど、」
「…うん」
「不安で、押しつぶされそうだったよ。前みたいに、近海も…みんなも、そばにいるわけじゃなかったから。つらい時とか、不安になった時に、ちゃんと話を聞いてくれるみんなが、いなかったから」
「…そーだな」
「だから、不安になったら近海に連絡してた。勉強教えてって言ってた。近海に頑張れって言われたら、頑張れる気がしたから。不安が、取れる気がしたから」
「……」
「たくさん、甘えてごめんなさい…」
小さな手の甲で、茶々は目元を拭った。濡れた睫毛が、パチパチと動いて、もう一粒生まれた涙が、ポタリと彼女の膝を伝って落ちた。
「昔から…、近海には甘えちゃう…。つらいことあると、泣きたくないのに、近海の前では泣いちゃう。イライラすると、あたっちゃう。近海には、いつも…」
「……っ、なんで?」
ぼーっとする。さっきから、現実ではない気がしていた。
熱く火照った身体が、ふわふわと、宙に浮いてしまいそうだ。
「…安心、するから…」
「ん?」
「近海のそばにいると、安心するから」
彼女の声を聞きながら、頭に触れていた手で、彼女の頰を包んだ。そのかたちを、なぞるように。
一瞬、ぴくんと身体が動いた。
熱くなった手のひらに、彼女の冷たい体温が当たると、急に現実に引き戻されるような気がした。



