これは、夢なんじゃないかと思う。
手のひらに、感じている体温が、信じられなかった。俺のことで泣いている茶々を見ているという現実が、嘘なんじゃないかと思った。
「…茶々、一旦聞いて」
茶々が、俺の“ すき ” に対して、どう思うかなんて、この際もう関係ないと思った。
どうして言ったのか、なんて。そのことで悩んでいるのであれば、いくらだって伝えたのに。
泣くほど、悩まなくてよかったのに。
「俺がお前に言った “ すき ” は、珠理とかめごちゃんとか、瀬名ちゃんに対して思ってる “ すき ” とは違う。もっと、トクベツで、俺の中でいちばん大事で、お前にしか向けられない気持ちのことなの」
「…う、」
「…ね、分かる?」
「……っ、ちゃ、茶々だけに…?」
「そう。お前だけ。もうずっと、お前だけ。お前にしか、感じたことねーよ。トクベツなんだよ」
…不思議と、恥ずかしいとは思わなかった。言い聞かせるように、不安にならないようにっていう思いが強かったからだろうか。
ずっと伝えないで隠してきた気持ちが、こんな風に堂々と口に出せるなんて、思ってもみなかった。
「…一昨日は、うまく言えなくてごめん。でも、ちゃんとした俺の気持ちだから。嘘でも、ふざけでもねーよ」
親指で、涙を拭った。いつのまにか、鼻の頭も赤くなっていた。赤鼻のトナカイだ。こんな顔も可愛いんだから、反則だ。
「…だから、ウキョウくんに対しても、余裕なくて怒ったんだよ。嫉妬してイライラしてただけ。この間のことは、茶々が謝ることじゃねーよ」
「…」
もう一度頭を撫でた。素直に従っている姿が、また可愛かった。



