相変わらずぼやけている頭でも、ちゃんと分かる。茶々が今、なにか解決できていない想いを抱えていること。


「熱はどのくらいなの? 38.0度超えてる?」


根拠はない。だけど、なんとなく、分かるんだ。もう、ずっと見てきたから。

どんなことを考えてるかは分からないけど、何かあることは、分かる。


「てか、絶対寝てた方がいいよ。顔も赤いし…。さっき冷えピタ剥がれてたでしょ。今、新しいの…」

「いい」


目の前に、新しい冷えピタが向けられた。好意を受け取っておきたい気もしたけど、どうしても茶々の様子が気になって、その細い腕をとった。


「…茶々、思ってることあるなら、ちゃんと言って」

「……」


もう、なんだっていい。茶々がもし、この間俺が言い逃げした気持ちに対して何かを感じたのであれば、それでもいい。

でも、きっと茶々は俺に何か言いたくてここに来たんだと思う。これも俺の憶測だけど、たぶん、間違ってはいない。


5年間、彼女を見守って来た俺が、そう言っている。


「…一昨日のことは、お前は謝んなくていいから。イライラしてた俺が悪かった。あんな風に怒ってしまって、怖い想いさせたと思う。ごめん」

「……」

「……でもお前には、もっと言いたいこととか、思ってることがあるんじゃねーの」


茶々の、細い手首を掴んだまま、じっと彼女の方を見た。白い腕が、一度だけピクリと動いた。
少しずつ下ろしていって、俺の膝の上で落ち着いた。

細い指をなぞる。触れていることに、茶々は抵抗しなかった。それよりも、何かをずっと考えるような難しい顔をして、しばらく下を向いていた。