ひどく心配している顔がこっちを向いた。今日、初めて目が合う。くりくりとした大きな目は、相変わらず綺麗だ。まるで宝石のよう。


「…茶々のせいだよ。茶々が、近海が待ってるのに連絡もしないで右京くんのところにいたりしたから…」

「…」

ピク、と、肩が跳ねる。まだ、この名前を聞くのは慣れていない。悪気があって、言ってるんじゃないことは分かってるけど。

…やっぱ、思い出すと地味に心臓に響くな。



「近海、ごめんね。最近ずっと、怒らせてばっかりで、ごめんなさい…」


宝石のような瞳が揺れる。ぐにゃっと曲がった顔は、茶々が不安に駆られている時の顔だ。

…俺だけしか知らない。俺にとっては、トクベツな顔。


「あ…っ、あのね。風邪ひいたって聞いたから色々買って来たんだけど…っ。でも、なんかさっき珠理が…来てたって…」

「……うん、来てたね」

「…っ。ごめん。じゃあ果物は冷蔵庫入れておく。珠理が持って来たやつがなくなったら、食べて…」

「……」


きょろきょろと、俺の方をまっすぐ見ようとしない目。さっきは一瞬、こちらに向けてくれたのに、それからは泳いでばかりだ。

だからその代わり、俺がひたすら茶々を追う。



…睫毛、長い。髪もサラサラ。華奢な身体、細い脚。白い腕。小さい手のひら。

その全部が、今俺だけのためにうちに来てくれた。たったそれだけのことが、こんなにも嬉しく思うなんて、知らなかった。


…好きだって言ったこと、取り消そうと思ったけど、やっぱりやめておこう。