「これを飲んで」と、スポーツ飲料が目の前に差し出された。その他にも、袋の中からフルーツやら何やらが出ているのが目に入る。
年に一度は必ず熱を出す珠理は、こういうのに慣れているらしい。
「…水分はちゃんと摂らなきゃダメよ? お腹は空いてない?」
「大丈夫…。さっき菓子パンかじった」
「ええ!? そんなの食事って言わないわよ!ちゃんと食べなきゃ!」
「うるせーな、食えねぇんだよ。ほっとけ」
ベッドに潜り込んだ。
心配そうに俺を見る珠理。昨日、メッセージが飛んできたときに身体がだるいと何気なく言ってしまったから、心配して見にきてくれたんだと思う。
…こーいう奴なんだ。コイツは。
やさしいんだ。ただのやさしさじゃない。色々とつらいことを経験してきたからなのか、言葉じゃ言い表せないやさしさをもっていると思う。
きっと、それも俺にはないものだ。
「…近海、元気ない。風邪のせい?」
「…」
「…なにか、あったの?」
…ほらな。勘もいい。俺の小さな変化にもすぐに気づく。
だけど、今日はどうしても、素直に「うん」と言えない。きっとそれは、ここ数日の間に何度も珠理に対する劣等感を感じているせい。
…かなわないって、思ってしまっているせい。



