薬を飲んで、横になる。少し起きているだけで、頭が割れそうなくらい痛かった。
脇に挟んでいた体温計は静かに音を立てて、38.2度と表示した。
…上がっている。最悪だ。ぼーっとするのもこのせいだな。1日やそこらで下がると思っていたのに、そうもいかないらしい。
もともと体温はあまり高くないから、昔から微熱程度の熱でも苦しむ羽目になる。そのかわり身体だけは丈夫だったはずなのに。クソ。
ここ2日、寝すぎて眠くもならない。寝てしまえば楽なんだろうけど、考えてしまうのは一昨日のことばかりだ。
“ 俺がいくらお前を好きで想ってたって、お前は結局、俺のとこには来ねーじゃん ”
「……はぁ」
どうして、勢いであんなことを言ってしまったんだろうと思う。
こんなかたちで伝える言葉じゃなかった。伝えたいわけでもなかった。
だけど、あの時はものすごくイライラしていて、溢れ出して止まらなかった黒いものが渦巻いて、こぼれてしまったんだ。
…茶々に、傘を押し付けて帰ってきたけど、どう思ったのだろうか。
そもそも、ちゃんと聞こえてたのかどうかさえ疑わしい。あの雨だったから。
でも、あれだけ声を荒げて言った言葉だったから、聞こえない方がおかしいのではないかとも思ってしまう。
…困らせていたら、どうしよう。
そんな後悔が押し寄せてくるにも、時間はかからなかった。帰ったその日の夜に、熱にうなされながらもそのことばかり考えていた。
目を横に逸らすと、渡せなかったマグカップが視界に入ってきた。ラッピングはそのまま。これを渡して、お疲れ様って言うはずだったのに。
…あれから、茶々からのメッセージも電話もない。当たり前だ。あんな突き放し方したのだから。
「…ごめん、茶々」
天井に向かって、呟く。
身体が元気だったら、すぐに彼女のところに向かうのに。
そして、謝ることができるのに。
…どこまでも、ダサい男なんだ。俺は。



