でも、まずはちゃんと謝らないといけないって、分かっている。
あんな雨の中、凍えちゃうくらい寒いのに、待たせてしまった。びしょ濡れの状態で帰らせてしまった。
…あんなに濡れていたのに、大きい傘を貸してくれた。
茶々にはあんなに怒っていたのに、濡れるからこれをさして帰れとでも言うように。
「…ちゃっちゃん」
「うん?」
次、近海に会ったら何から話そうと考え込んでいる中に、容赦なく右京くんの声が入り込んむ。
「オーミさんって人に泣かされたら、俺のとこにおいで」
「………」
グイグイと、入り込むような強さがある声だったのに、見上げた時に見た右京くんは、少し切なそうな顔をしていた。
唇の端は上がっているのに、それはキュッと結ばれている。
「じゃ、俺も帰るわ。一昨日は、ほんとにありがとうな」
「あっ……、うん!」
ポン、と、1度だけ大きな手のひらが頭に乗った。
あたしの頭から離れて、ひらひらと左右に揺れたそれは、青い髪とともに消えた。
「…あたしも、行かなきゃ」
靴を履いて、外へ出る。この後は、初とケーキバイキングに行くことになっている。
卒業式まで授業がないから、暇なんだ。だから、今のうちにやりたいことをやっておかなきゃいけない、って。
…でも、やっぱりどうしても、引っかかってしまう。
「……オーミ…」
どうしても、考えてしまうよ。



