今回の、試験だってそう。
受験勉強で不安になったら、近海に話したくなった。近海に「大丈夫だ」って言ってもらえれば、大丈夫になる気がしたから。
センター試験のことだって、採点のことだって、二次試験のことだって、なんだって報告したかった。そして、「すごいな」って、言ってもらうのが嬉しかった。
だけどその分、近海との距離を感じることだって、多くて。
近海や珠理、めご、瀬名が卒業してから、茶々だけ取り残されている気がした。それでもたまに会えば、珠理とめごは相変わらずで安心したし、瀬名だって全然変わっていなかった。
…ただ、近海だけは、ちょっとだけ距離ができたように思えた。
どうしてかは、分からないけど。
“ 変わらねーよ ”
近海は笑ってそう言ってくれたけど、それでも変わったと思う。
茶々の知らない土地へ行って、茶々の知らない人たちに出会って、茶々の知らない女の人たちと話す。
制服も着ていない。高校よりももっともっと大きなキャンパスに馴染んでいて、それでいてバイトなんか始めちゃって。
…茶々の頭を撫でて、「どうしたんだよ」と言ってくれる近海は、遠くに行ってしまったような気がした。
2人でいると、少しそれは和らぐのに、それ以外の時は、どうしても感じてしまう。
だから、焦りで強くあたることが多くなった。もともと、イライラしてたら近海にあたってしまうことが多かったけど、それ以上に。
近海の前では、良い意味でも悪い意味でも、自分がまるごと出てしまう。
笑顔よりも、怒ったり泣いたりしている顔の方が多いんだ、きっと。
「…なんでもない。大丈夫だよ」
なんとなく、右京くんには、自分をまるごと見せる気にはなれなかった。
チガウ。右京くんは関係ない。あたしは、近海に言いたいことがたくさんある。
イライラすることも、なんでって思うことも、たくさんあるよ。相変わらずマイナスな感情ばかりだけど、それでも、近海にぶつけたい気持ちがたくさんあるよ。



