席を立った真由さんが、神藤さんと共に秘書室を出ていく。

その様子を、あ然とした表情で見送る私たち。

「……さて。秘書のみんな」

レヴィが声をかけ、呪縛が解けたようにハッとする私たち。

「莉子を傷つけたこと、ひとりずつ謝ってもらおうか」

にこーと笑顔を浮かべるレヴィ。でもその目の奥は、全く笑っていない。威圧的なオーラに、全員がたじろいだ。

「レヴィ、だ、大丈夫よ、もう。私、嫌われるの慣れてるし」

「いいや、良くない。謝らないなら、名誉棄損で訴える」

「そんなことしなくていいってば!」

言い争う私たちの前で、秘書たちが頭を下げていっせいに「ごめんなさい」と叫んだのは、言うまでもない。

こうして、情報漏えい事件はひとまず方が付いた。

数日後、相手企業は新製品の特許出願を取り下げ、今回のことを公に認めつつ、すべては多部博之の独断でやったことであり、情報漏えいについて上層部は何も知らなかった、と発表した。

真由さんと博之が起こした事件は、その後数日間ワイドショーで取り上げられたけど、大物芸能人カップルの結婚があり、話題は完全にそちらに移ったようだった。

事件を起こした彼らは起訴されることとなった。処分が決まるのは、もう少し先になるだろう。