「早かったね」

何階から降りてきたのか知らないけど、5分も経っていないと思う。

息を整えながら近づいてくるレヴィの表情は、驚いているみたいだけど迷惑そうには見えない。

「これ、お弁当。朝間に合わなくてごめんね」

ホッとしてお弁当を入れたバッグを差し出すと、レヴィは両手でそれを受け取った。

「莉子が僕にお弁当を……」

胸に弁当を抱くレヴィ。まぶたを閉じ、じっと何かを感じ取ろうとしているみたい。

「あ、あのう……」

「とても嬉しいよ。ありがとう」

しばらくじっとしていたレヴィだけど、声をかけるとにぱっと無邪気に笑う。

あ、喜んでる……。良かった。

「じゃあ、私はこれで」

いつまでもここで話していたら、休憩時間がなくなっちゃうよね。

レヴィが頬を染めて喜ぶ顔を直視するのが照れくさいこともあり、さっさと帰ろうとすると。

「ああ、待って莉子。せっかく来てくれたんだから、みんなに紹介するよ」

手を握られて振り向かされてしまった。

「え、今日はいいよ」

来週からここの秘書室で働くことは決まっているけど、今から挨拶しなくても。

そんな予定じゃなかったので、緊張してしまう。