腕に針が刺さり、チクリとした。



「いつもはブレンドしたお茶に混ぜてたんだ。 これは原液だから、いつもよりも効くのが早いと思う」



注射器の中の液がどんどん減っていく。腕が熱い。



「どうして……」

「え?」

「どうして助けてくれるの? エデ伯母さまは私を消したくてしょうがないのに……」



クリストフは注射針を抜くと、消毒液で湿った布で指圧した。慣れた手つき。医学を学んでいるなんて聞いたことない。一体どこで学んだんだろう。クリストフにこんな一面がある事を知っている人はいるんだろうか。



「母様は僕たちの邪魔をする気はないみたいだ」

「え?」

「一時結界を解くよ」



クリストフはパチン!っと指を鳴らした。けど部屋に変化は見られない。元々結界が見えていない私には、どんな結界が張られていたのか分からない。



「ベアトリーチェ!!」



突然目の前に現れたアウロラに驚いた。抱きしめられ、ホッとした。体の力が抜けていく。



「結界を解いた途端ベアトリーチェの気配に気付くなんて流石だね」



アウロラはパッと体を離すと、クリストフを睨みつけた。凄まじい殺気に私が震えてしまいそうだった。



「そなたの仕業かッッ!!!!」



ピクリと動いたアウロラの腕を慌てて掴んだ。



「違う!! クリストフは助けてくれたの!!」

「ベアトリーチェ!」



少し頭を起こしただけだというのにクラッとした。クリストフは腕を回して体を支えてくれた。



「まだ急に動いてはダメだ。 横になっていないと……」

「ごめ、なさい……」



壊れ物を扱うかのように頭を枕に乗せてくれた。そんな私たちをアウロラは困惑した顔で見ている。