「…じゃあさ、話題変えるけど」


そして、斎藤君は挑むような目つきで私を見る。


「何で1ヶ月前、保健室で泣いてたの?」


(…この人は、何を知りたいの?)


私は眉をひそめた。



ともかく、私の過去を知られたくない。


ここは嘘をつき通さねば。


「…頭がものすごく痛かったから」


「嘘だろ。…辛かったんだろ?」


私は何も言い返せずに俯いた。


「川本、何か隠してるよな?…話さないのか?」


(話したい!辛かったこと全部ぶちまけたい!)


けれども私の口は嘘をつく。


「そんな事ない。怖い夢を見ただけ」


「…なあ、何でそんなに隠すんだよ?」


斎藤君は片足に体重をかけ、私の目を見据える。


「隠してなんかない!」


私は斎藤君を睨んだ。


「…何で斎藤君に話さないといけないの?」


「1人で抱え込むなよ」


隼人君は私の問いに答えなかった。


(私は抱え込んでなんかない!)


「だからっ…」


私は大きく息をつく。


「もし私に隠している過去があったとして、それは斎藤君が考えている程、軽いものじゃないの」


私はゆっくりと言葉を選ぶ。


「だから…」


「あ、雪」


急に斎藤君が上を見上げ、口を開いた。


雪など降ってはいなかったが、私は"雪"という言葉に反応し、ビクッと縮こまった。