「ごめんごめん…クックッ」


必死に笑いをこらえながら、謝られても困る。


「いや、大丈夫だけど…」


隼人君は意外と笑い上戸なのかもしれない。


しばらくして落ち着きを取り戻した隼人君は、涙を拭きながら私の方を向いた。


「…だから、誰だって辛い時とかあるから。溜め込まないで…っ…たまには吐き出した方がいいよ」


途中途中で口の端がつりあがりそうになりながら話されても、いまいち説得力が無い。


「まあ、誰だって話したくない事、あると思うけど…」


隼人君の目が、ほんの少し伏し目がちになった。


「意外とね、話してみると楽だよ?」


隼人君のその声は、とても明るくて、力強かった。


表情は、とても清々しく変化している。



それもそうだろう。


隼人君は、自分でずっと抱え込んで来た事を私に言えたのだから。


それが、例え100%のうちの10%にも満たないとしても。


悩み続け、誰にも言えない苦しみを打ち明けたのは、大きな進歩になるはずだ。



私は考える。


(今日、隼人君にほんの少し悩みを言えた)


だから?


結局は?



何も、変わらない。


隼人君は変わったとしても。


私にアドバイスをくれたとしても。