幸せを探して

私は頷く事しか出来なかった。


「そういえば、何の用で来たの?今日は愛来、居ないよね?」


その質問に私は固まる。


何故なら、聞いてしまったから。


私が隼人君に駆け寄る前に、隼人君が呟いていた魂の叫びを。


いつもは笑顔だけれど、その裏には誰にも言えないような苦悩が隠されている事を、知ってしまったから。


だから、もし私が悩みを打ち明けたところで、隼人君はもっともっと苦しくなるんじゃないだろうか。


足が動かない苦しみと、


私が相談した苦しみとで。



愛来にも結局は言えなかった。


もう、隼人君にも言うのをやめよう。


自分1人で溜め込もう。


それが1番楽で、辛くて、誰も傷つけない選択だから。



だから私は、笑顔を貼り付けて口を開く。


「なん…」


「何でもないなんて言わせないよ」


私は驚いて隼人君を見つめた。


今、私は確かに“何でもないよ”と言おうとした。


何で、分かっちゃうんだろう。


「今日はね、隼人君のお見舞いに来たの」


「この前も来たのに?」


嘘。


ばれないで。


「だって、この前は愛来の付き添いだったから…」


「ねえ」


私の言葉を遮り、隼人君は澄んだ目で私を覗き込む。