幸せを探して

(えっ?)


後ろ姿から明らかに隼人君だと分かるそれは、病室の床に座り込んでいた。


隣では車椅子が横倒しに倒れているから、きっとバランスを崩してしまったのだろう。


隼人君はこちらに背中を向け、必死に立ち上がろうとしていた。


もしくは、ベッドに向かいたかったか、車椅子に座りたかったのかもしれない。


どちらにせよ、助けが無いと出来ないということは、入り口でぼうっと突っ立っている私にも丸分かりだった。


私は部屋に入って引き戸を閉めたが、その音すら集中している隼人君には聞こえていないようだった。


「っ…何でだよ……何で……」


隼人君の手は床を離れ、足へと向かう。


隼人君は、自分の細くなって思うように動かせなくなった足を擦り、そして叩く。


「何で……動かないんだよっ……」


その魂の叫びは、私の心を貫いた。


動かそうとしているのに、当の足はほぼ動いてくれない。


そもそも、ほとんど力すら入らない。


そんな苦しみが、伝わってくる。


「隼人君っ!」


私は隼人君に駆け寄った。


「美空ちゃん!?…いつからいたの?」


驚いたように尋ねる隼人君。


私はそれには答えず、


「車椅子、乗るの?」


と質問を投げかけた。