幸せを探して

「もちろんだよ。いつでも来て」


「うんっ…」


私のちっぽけな努力を、受け入れてくれた。


それだけで、とても嬉しかった。


私は精一杯の笑顔を見せる。


いつもちゃんと笑えていないから、自然な笑顔かどうか定かではないけれど。


しばらくして愛来がトイレから戻ってきて、私達は病室を後にした。



「お兄ちゃん、元気そうで良かった」


帰り道、唐突に愛来が口を開いた。


「隼人君いつも笑顔で、こっちまで元気になれるよね」


私も同調する。


「うん!…お兄ちゃん、自分がどれだけ辛くても、絶対泣いたりしないんだ」


「えっ?」


初めて聞かされる話に、私は戸惑った。


「お兄ちゃんね、初めてのリハビリの時、予想以上に両足が動かなくて、かなりショックを受けててね」


愛来は雪の塊を蹴りながら話を続ける。


「けどね、絶対泣かなかったんだ。見てるこっちが泣きそうになったのに、お兄ちゃんずっと笑ってたの」


愛来は突然雪の塊を踏み潰し、私の方を向いた。


「凄いよね…苦しいのに笑ってて。尊敬しちゃう」


私は頷いた。



苦しい時に笑えるなんて、どれほど強い人なんだろう。


私は知らず知らずのうちに自分と重ねていた。


苦しい時こそ泣いていたから。


現実逃避をしていたから。


これは夢だと、何度も言い聞かせたから。