幸せを探して

「もうこんな時間!?」


愛来が驚いたように立ち上がる。


「私、家帰って塾の宿題やらないといけない…」


まだ未練がありそうな愛来に、私は話しかける。


「じゃあ愛来、一緒に帰ろ?」


「うん…でもトイレ行きたいからここで待っててくれる?すぐ戻るから!」


愛来はばたばたと部屋を飛び出して行った。


思わず私と隼人君は、顔を見合わせて笑ってしまった。


「本当にせっかちだなあ…」


隼人君が伸ばした足を擦りながら呟く。


私は無言で微笑み、散らかったお菓子のゴミを片付け始めた。


作り笑いがこれ程上手になるなんて。



「ごめんね…手伝えなくて」


隼人君が自分の周りを見渡しながら、すまなそうに口を開く。


足が動かないから、自分の周りのものしか取れないのだ。


「ううん、平気だよ…それより」


私は手を止め、隼人君の方を向いた。



「また今度、来てもいいかな…?」


それは、私のちっぽけな勇気。


隼人君と、2人きりで、もっと話したかった。


1年前の事も、今の事も。


隼人君なら、良い相談相手になってくれそうな気がして。


きっと、私も壊れずに済む。


そんな私の思いをすくい取るように、隼人君は花が咲くように笑った。