幸せを探して

「愛来、今日チアダンは?」


「チアダンの1年にインフルが続出してさ、学級閉鎖になるクラスもあるみたいだから、今日から明後日まで休みなのー!いえーい!」


マフラーと手袋を着けたままでガッツポーズを決める愛来は面白かった。


「うんうん、それで?」


「だから今日、お兄ちゃんのお見舞いに行こうと思ってさ!美空も来ない?」


「隼人(はやと)君の?」



橘 隼人。

隼人君は、高校1年生。

今から2年前―中学2年生―の時に、事故で大怪我を負った。

その後遺症で、両足ともほぼ動かなくなった。

普段は入院生活で車椅子を使っているが、リバビリをとても頑張っている。

私と美花は、隼人君と仲が良かった。

それに、1年前に私が入院した病院に隼人君が同じく入院していた事もあって、とても世話になった。



「行きたい!」


「じゃあ今日の放課後、16:15にまんまるパン屋さんの前で待ち合わせね!」



まんまるパン屋さんは、昨日斎藤君が言っていたパン屋だ。


あそこの近くは、高級感のある住宅街が立ち並んでいる。


(あそこのどれかに住んでいるなら、斎藤君、かなりお金持ち…)


なんて、関わらないと決めたのに余計なことを考えてしまった。


愛来が自分の席へ戻り、教室がいつもの様にがやがやとうるさくなってきた頃、斎藤君が登校してきた。