幸せを探して

それは、親切心から。


そばに居て、精一杯の手当てをして、少しでも彼の気分が良くなるなら。


自分の事など、何も考えていなかった。


「…本当にごめん」


陸人は俯く。


「陸人、今度から教えなければ大丈夫だから。そんなに自分の事、責めないで?」


「…お前も、自分の事責めるなよ」


その優しすぎる言葉が、私の胸に響く。


机にリュックを置こうとしていた私の手が止まる。


「別に、責めてなんか…」


陸人に安心してもらおうとそう言ってみるけれど。


(嘘。嘘…!)


全て、嘘。


「ならいいけど……」



陸人の勘はとても鋭い。


だから私の心の闇が全て、ばれそうになる。


美花が居なくなってから溜め込んできた苦しみや悲しみを、陸人の前だと吐き出しそうになる。


けれど、言わない。


言ったら迷惑になりそうだから。


もう1年が経ったのに、まだ引きずっていることを馬鹿にされそうだから。


そして、私が私で無くなりそうだから。


嘘という殻の中に入った私。


自分で殻の外に出て、広い世界を見れる日が来るのはいつだろうか…?



「陸人…私ね」


(このままだと、駄目だ)