幸せを探して

「えっ?」


振り向いた斎藤君の方へ向かって私は作り笑いを浮かべて手を振る。


早く行って、という意味も込めて。


このままだと、倒れそう…。


斎藤君が見ている中で倒れたくない。


また、何かを言われるのは嫌だ。


「…大丈夫?」


斎藤君が心配そうに駆け寄ろうとする。


「ちょっと目眩がしただけだから、大丈夫」


私は普通の声を出そうと努力する。


「そっか…」


そう言って背を向ける彼の赤いリュックを、今度は見ないようにしながら私はドアを閉めた。



私は仏壇の所まで逃げるように走って行った。


美花の可愛らしい笑顔の写真が飾られている。


(美花のこと、嘘ついちゃった…ごめんなさい。…こんな姉、失格だね)


私はずっと、涙を堪えながら心の中で美花に語りかけていた。



(いつまでこんな状態が続くんだろう?)


夜、私は毛布の中に潜り込みながら考えていた。


雪を見ただけで倒れてしまうなんて、嫌な体質だ。


それに、斎藤君と関わらないと決めていたのに、家に招き入れてしまったなんてうかつな行為だった。


さっきだって、壁から離れていたら本当に倒れるところだった。


そうしたら、斎藤君に転入早々、私の秘密がばれるところだった。


(危ない危ない…)


そこまで考えたところで、私は重大な事実に気がついた。