幸せを探して

「…あれ、川本見ないの?」


私は頷いた。


「えっ、何で……あ!」


斎藤君は急に大声を出し、手をポンと打った。


「川本って、3時間目に保健室に行った!?」


「…そうだよ」


(どうか、その答えに辿り着かないで)


私はまたもや神様に祈る。


「えっ、てことは…ちょっと待って…」


斎藤君は少しの間考え込んでいた。


けれどすぐに、絡まっていた全ての糸がほどけた時のような顔をした。


「俺があの後すぐに保健室に行ったから……あの時ベッドで寝てて、泣いてたのって」


(それ以上、踏み込まないで)


「斎藤君」


有無を言わさない私の声は、静かな住宅街に広がる。


「それ以上、言わないで?」


(お願いだから)


私の言葉は重く響く。


斎藤君はびっくりしたように目を見開くと、頷いた。


「あ…ごめん。じゃあ、また明日」


「うん、じゃあね」


斎藤君がそれ以上踏み込まなかったことに感謝をする。


私は玄関から手を振った。



その時にあろう事か、後ろを向いた斎藤君の赤いリュックを見てしまったのだ。


赤いリュックに白い雪が降りかかる。


その光景は、あの日の美花の周りの雪と一緒で。


「っ……」


(嫌だ、見たくない!)


よろめき、壁に手をつく。