幸せを探して

「…うん、ほかの学校だよ」


私は、声が震えないように必死で抑えていた。


「そっか」


私は頷く。


(ごめんね、ごめんね美花!)


と頭の中で必死に謝りながら。



「…親はどこ?」


部屋の空気がずしりと重くなり、それに耐えきれなくなったのだろうか。


斎藤君が話題を変えて質問してきてくれたことに感謝する。


「お母さんは仕事だよ」


「…お、お父さんはどこ?」


何故か斎藤君の声が硬くなったが、私は気にせずに答えた。


「お父さんは単身赴任中でね、アメリカにいるの」


「あ、アメリカなんだ…」


「斎藤君もアメリカから来たんでしょ?」


「うん…」


斎藤君はぎこちなく微笑んだ。



それからしばらく会話に花を咲かせ、17:00になった。


「今日はありがと…少し体調良くなった気がする」


「うん、良かった。お大事にね」


私は笑顔の仮面を顔に貼り付ける。


「冷えピタ貼って帰るよ…あ、雪だ!」


冷えピタのお礼を言われて微笑んだが、それどころではない。



(雪!?タイミング悪すぎるよ!)


「…」


「アメリカじゃ、降ってる雪見る機会がなくて…綺麗だな…」


「…そうだね」


玄関先で感嘆の声をもらし、上空を見つめる斎藤君とは違い、私は下を向いていた。