幸せを探して

私は、危うく持っていたコップを落としそうになった。


手が震える。


「…それも、私の妹…」


(それ以上踏み込まないで!)


私は悟られないようにしながら、必死に神様に祈る。


「なあ、川本って双子なの?」



(きたーーー!)


今さっき神様にお願いしたばかりなのに!


(何て答えればいいんだろう?)


私は迷った。


私は双子として生まれてきたけれど、今は双子ではない。


「双子、だよ…」


何とかそう言い切った私に、拍手を送りたい気分だ。


「だよな、ものすごく顔が似てて、びっくりしたよ!」


「ありがとう」


私は笑顔を顔に貼り付ける。


上手く笑えているかどうか…。


「川本の妹、何組なの?」



私の顔から血の気が失せた。


(待って、斎藤君は私に何を聞いているの?)


私の過去は、転入生に教えても良い事などない。


知られたくない…。


怖い…。


「…教えない」


脳をフル回転させ、この答えを導き出した。


「違う学校なの?」


斎藤君は私に質問し続ける。


「…何でそう思うの?」


「この学年、双子いないんだろ?…誰だったかな…高橋が言ってた」


(陸人…余計な事を…)


傷口に塩を塗るような真似はするものではない。


あの日、約束したことを忘れたのだろうか。