「温かいもの出すね。紅茶飲める?」


私は暖房のスイッチを押しながら聞く。


「うん…ありがとう」


斎藤君はリュックを床に置いた。


「あと、横になってていいから。それと、熱ありそう?体温計あるけど使う?冷えピタとか使いそう?…少ししたら暖房効くと思うけど、寒かったら言ってね」



矢継ぎ早に質問を続ける私に追いつけなくなったのか、斎藤君は困ったような笑いを浮かべた。


「あ…ごめん」


私はお湯を沸かした後、斎藤君の所へ体温計を持っていった。


「はい。熱測って」


こくん、と頷き、私の手から体温計をとり、カバーを外す彼の一連の動き。


それは、信じられないほど鈍かった。


「ちょっとごめん」


私は有無を言わさずに彼の額に手を当てた。


「熱あるじゃん!なんで言ってくれなかったの?横になってて、冷えピタ持ってくるから」


私はお母さんの如く斎藤君を寝かせ、その足で冷えピタを持って戻った。


「はい、これでよしと」


冷えピタを貼った―強制的に貼らされた―斎藤君の顔は蒼白だった。


「……何で、今日初めて会ったのにこんなに優しくしてくれるの?」


(えっ?)


私は驚いて斎藤君を見やる。


たとえ私が同じクラスメイトだろうと、今日初めて会った人の家にお邪魔する事。


それは、斎藤君にとってとても不安なことだろう。