幸せを探して

「そんなに……泣かないで…私は、元気になるから……」


その言葉とは裏腹に、美花の声はどんどん小さくなっていく。


「……美花っ……」


私は泣きながら心の中で叫び、訴える。


(絶対に、居なくならないでよ…?)


と。


美花は痛みに顔をしかめながら、震える手を伸ばし、私の頬を伝う涙をその細い指先で拭き取った。


けれどもすぐにその手は力を失い、雪の上に倒れる。


「美空…泣かないで…」


美花は痛みのあまり食いしばっている歯の隙間から声を絞り出す。


「私は、大丈夫だから…」



初めて、死と隣り合わせという事の恐ろしさに気づいた瞬間だった。


いつも隣に居た人が、もしかしたら明日には居なくなるかもしれない。


そんな恐怖が、間近に迫りつつあった。


少し沈黙が訪れ、私は美花の手を握り締めていた。


体温が感じられないほどかじかみ、冷たくなった美花の手。


(救急車、まだ…?)


赤い雪に、白い雪が降り注ぐ。


それは、良い光景ではなかった。


目を背けたくても、見てしまう。


苦しかった。



生まれてから、いや、この世に存在した時から私達は一緒だった。


隣を見れば美花がいて、美花も隣を見ると私がいる。


そうやって、ときには喧嘩もしながら私達は生きてきた。