チリリリリンッ…チリリリリンッ…


「うるさいっ……」


私―川本 美空(かわもと みく)―は、やみくもに手を動かし、目覚まし時計を止めた。


カーテンからうっすらと差し込む太陽の光が眩しい。


微かに鳥の歌声も聞こえる。


こんなにスムーズに起きれた朝は久しぶりだ。


もっとも月曜日で、始業式だけれど。



「ほら美花(みか)、起きて。朝だよ……」


私は上体を起こし、隣を見る。


双子の妹の美花を起こす為に。


けれど、そこには誰も居ない。


そして、私ははっと気づく。


美花は、居ないのだと…。



(また、やってしまった…)


私はうなだれる。


美花は、居ないのだ。


1年前に亡くなったから。


頭では理解している。


妹がもう二度と戻っては来ないと。


でも、身体が全てを覚えているのだ。



美花の起こし方。


美花との手の繋ぎ方。


数え切れないほど、覚えている。


私はため息をついてベッドから抜け出し、カーテンを開けた。


太陽は辛うじて私を照らしているけれど、その姿は厚い雲に阻まれ、見ることができない。


(もう、1年が過ぎた)


私はぼんやりとした頭を奮い立たせるように、嫌なことを考える。



去年の12月10日。


私の13年の人生で、1番最悪な日。