幸せを探して

「無いけど、何で?」


嘘、嘘。


ごめんなさい、愛来。


「いや…」


愛来は珍しく言葉を濁した。


「何となく…。でも、悩んでたり困ったりしてたら言ってね!前みたいに話聞くからさ!」


ほんの少しの言葉なのに、その台詞には私への気遣いと心配が溢れ出ていた。



氷のように固まったはずの明るい感情が、少しだけ元に戻ったような気がした。


美花が居なくなってから、久しぶりに"嬉しい"と思えた。


ような気がした。


でも…。


「ありがとう、愛来。でも、今は悩んでる事とかないから大丈夫だよ」


考えるより先に口が動いた。


愛来は私の自然な声と上手に作った笑顔を見て、にこにこと頷く。


「分かったー!…あっ、私も掃除だ!じゃあね美空、また明日!」


「うん、ばいばい!」


私は愛来の後ろ姿に向かって手を振った。



そして、掃除をしながら後悔する。


(私は、何がしたいんだろう)


(さっき、愛来に言えば良かったのかな)


“辛い、助けて”


と。



教室の床を箒で掃いていると、同じ班の男子2人の話し声が耳に入ってきた。


「そういえば、この頃の斎藤、よく体育見学するよな」


最初に口を開いたのは、ちりとりでゴミを集めている男子。