「なぁ、尊人。お前、広瀬となに話してたんだよ」

午後四時二十分、終礼のチャイムが学校全体に鳴り響いて教室を出たあと、僕は自転車に乗って、友だちの尊人と一緒に家に帰っていた。

「え、いつの話?」

尊人は、首をかしげた。

「朝の話だよ。お前、広瀬と話してただろ」

眉間にしわを寄せて、僕は尊人に強い口調で訊いた。

「なんでもいいじゃん。そんなこと」

そう言って尊人は僕から逃げるように、自転車をこぐスピードを上げた。

「なんで教えてくれないんだよ、尊人。僕たち、友だちだろ」

大きな声で言いながら、僕は尊人の後を追いかけた。

舗装された道を自転車でスピードを上げて進むと、涼しい風が僕の髪をなびかせた。